カテゴリー : Designer’s note

海外からみた日本の非電源ゲーム業界の特殊性について・他

この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2014 の第6日目の記事として書かれました。


皆様こんにちは、非電源ゲーム制作をしている佐藤純一(Junias)と申します。

赤ずきんは眠らない」「ワリトリペンギン」「Lost Legacy Legend:赤ずきんは二度寝る(ワンドロー様)」など制作しています。

今回このボードゲームデザインアドベントカレンダーに投稿させて頂くにあたり、様々な有名ゲームデザイナーさんが各々制作に関するハウトゥや考察を掲載なさっております。私も当初そうした制作に関して語るつもりでした。…が、私自身、世に出した作品数が4,5作程度と決して多くなくまた、私は他の方ほど論理的にゲームを作っている感が薄いため、そうしたゲームデザインそのものについての考察は経験豊富な他の方に御任せした方が良い、と感じました。

そこで、私は「日本のミニマリズム」と呼ばれる国産アナログゲームの傾向から見える今後の動きについて語ってみたいと思います。

Table Games in the World:日本のミニマリズム

日本のゲームに多く見られる「最小のコンポーネントで面白いゲームを作る」という傾向が生まれた背景には、3つの理由があると感じています。

  • 要因1:コミックマーケット
    いわゆるコミケによって、そもそも日本に「同人」という文化があります。勿論コミケは文字通りコミック、マンガが主流のイベントですが、これがある事によって、アナログゲームの分野でも日本では同人というものに対する心理的抵抗が低いと考えられます。
    いわゆる同人という概念があまりない海外では、仮に良いゲームのアイデアがあったとしても、パブリッシャ(出版社)に自作のゲームを持ち込んで権利を買い取ってもらうか、あるいはスモールパブリッシャとして小さな会社を立ち上げる事になります。勿論日本に比べて、自分のゲームを発信することの難度が高い事は言うまでもありません。

 

  • 要因2:萬印堂さんなどによる、小規模の印刷サポート
    最近ではポプルスさん、タチキタプリントさん、世界印刷さんなど多くの印刷会社さんが日本の同人ゲーム市場に印刷サービスを提供しています。
    その草分けである萬印堂さんが同人向け印刷サービスを提供するまでは、家庭用プリンタを用いて名刺シート等に印刷してゲームを制作するしかありませんでした。
    家庭用プリンタでのゲーム制作は気軽に印刷する事が出来る一方、1枚あたりの単価が高く工数もかかり、また品質も高くありません。最初に萬印堂さんの始めた少部数でオーダーできる印刷サービスによって、日本生まれの同人アナログゲームの印刷品質が1段上がり、かつゲーム制作のハードルを下げた事は間違いありません。
    その一方で少部数でのゲーム印刷は家庭用プリンタ程ではないにせよ高価にならざるをえず、限られた予算の中でゲームを制作する為にも、1つのゲームに含まれるコンポーネント(内容物)の量を少なくなるようにゲームデザインする傾向が生まれた、と考えられます。
    海外では数百部単位で引き受けて下さる印刷所は聞いた限りないようですし、結果として個人制作でかつコンポーネントの少ないゲームを多く出る様になった、という事なのではないかと考えます。

 

  • 要因3:ゲームマーケットの出展スペース
    上にあげたような2つの要因によって、東京と大阪で併せて年に3回行われるゲームマーケットはほとんど個人出展です。ゲームマーケットは年に3回、いずれも1日限りの開催でしかも頒布スペースは最小単位の場合横幅1m程度と、決して広くないスペースです。プレイスペースを取った場合でも通常1卓です。
    狭いスペースの中でゲームを効果的に見せ、かつたった7時間の開催期間中に出来るだけ多くの方に遊んで頂けるような、短時間で遊べるゲームが話題や注目が集まりやすかったのではないか、と考えられます。

この他にもカナイセイジさんの「ラブレター」の大ヒットもあり、こうした様々な要因が絡み合って日本においては比較的印刷コストの小さいゲームがそれぞれの工夫によって作られたのではないか、と私は考えます。

このように日本の非電源ゲームにおける特異な環境は、他に類のない独自のものであると言えます。初めてエッセンシュピールに行った時に私はその規模の大きさにこんな世界があるのかと度肝を抜かれたのですが、逆の立場である海外の愛好家から見れば「他にない独自の祭典が日本にある!」という見え方をするのでしょう。
海外でお知り合いになった方から日本のゲームマーケットはすごくユニークらしいね、行ってみたいよというお話を伺ったのもそういう事なのではないか、と感じました。

海外パブリッシャが日本の同人ゲームをチェックしにくるという動きは去年あたりから既に少しずつ始まっていますが、そうした動きはよりいっそう加速する事が予想されます。
今後は私のようにJaponBrandに参加するなどしてドイツまで持ってゆかずとも、海外デビューするチャンスは今後いっそう増えるでしょう。また、キックスターターがその後押しを強力にするものと思います。

そうした事から少しでも海外デビューに興味のあるゲーム作家さんは、今後ゲームを作る場合に最低限英語でのルールを備える事を強くオススメ致します。スカウトしに来た海外パブリッシャさんにとってみれば、「English rules available!(英語ルールあります)」などと目立つところに書いてあるだけで興味が数段増すと思いますので。

私の投稿は以上なのですが、前日の常次さんの記事をはじめ、先に書かれた方々の記事を拝見して多いに触発されておりまして、蛇足として戯れに自分のゲーム発想方法や訓練として普段やっている事について書き記してみようと思います。

  • 枠から作る
    よくゲームのルールから作る派、テーマから作る派等と言われますが、私は「枠から作る派」のようです。
    枠というと分かりづらいかもしれませんが、どちらかというとテーマから作る派に近いのでしょうか。どういうゲームを作りたいのかという条件を先に設定して、そこから必要な要素を出してゆきます。
    過去作のノートを振り返ってみると、自分の代表作であるところの「赤ずきんは眠らない」だと作り始める時に「カードをめくってドヤ顔(髑髏と薔薇)」「童話がテーマ」「カード枚数を16枚(※現バージョンは18枚)」という三つの条件を先に設定してから作り始めました。「ワリトリペンギン」のノートを見ると、「DigDug2(※ファミコンゲーム)」「ランダム要素なし」「読み切れないゲーム」とあって、かつ当時喉の手術で入院中だったので手元にある牛乳パックとハサミだけでつくってみたゲームでした。
  • 遊んだゲームの要素を分解して構造化してみる
    これについては、まさに前日の常次さんの投稿で既に「分析」について語られていたので簡単に。
    私の場合はゲームを遊んだあと、出来るだけ要素を分解してそれぞれがそのゲーム全体に及ぼす意味や効果を意識して(出来れば図にして)います。Boogieboardという何度書いても消せる筆談ボードを持ってまして、それにゲームの要素を出来るだけ書き出し、それぞれの要素にどういう相互作用があるのか関連性を見ています。
    特になにがどうという事はないのですが、創作の経験値があがるのでは、と勝手に考えています。

 

蛇足もこのくらいにしましょう。次の7日目は友人の篠原遊戯重工 の篠原さんです。
アドベントカレンダー2日目の倦怠期 大新さんと篠原さんは、ほぼ同時期にゲームを創り始めた同期のようなものと勝手に思っておりまして、彼らの事はつい何かと意識してしまうので記事が楽しみです。

ご意見やご感想がございましたら、以下のいずれかまで頂ければ大変幸甚に存じます。

Twitter: @junias_
Website:http://junias.net/
Mail:info@junias.net

ツイートツイート

ロストレガシー レジェンド製作に参加致しました

「ロストレガシーレジェンド」

http://one-draw.jp/event/event_gm2014a.html

Lost Legacy Legend

Lost Legacy Legend

ワンドロー様製作の有名タイトル「ロストレガシー」の一区切りとなる大型セット「ロストレガシー レジェンド」の製作に参加致しました!

従来のロストレガシーシリーズにおいては、「他のロストレガシーセットのカードを混ぜてもプレイ可能でなければならない」という製作上の大きな制約があったのですが、今回のレジェンドに置いては8人のゲーム作家さんそれぞれがその制約を排して作っています。

私は8作中の1作、「赤ずきんは二度寝る」を手がけさせて頂きました。

私自身のセットはもちろん、他の作家さんのゲームも何作か遊ばせて頂きましたが、製作上の自由度が増したことで、結果として8人それぞれのゲーム作家の個性が色濃く反映されている様に強く感じました。

私が担当した「赤ずきんは二度寝る」について。
実はこのタイトル、最初は友人Power 9 Gamesのナインさんが、「赤ずきんは眠らない」をロストレガシーに組み込めないかと製作開始したゲームでした。
諸事情から今年の春ごろナインさんより製作を引き継いだあと、私で手を加えた結果、そうそうたる作家陣にも見劣りしないと自負出来る作品に仕上りました。貴重なキッカケを作って下さったナインさんにはこの場を借りて御礼致します。

詳細な内容についてここでは触れませんが「自分の手番を攻撃的にパスする」というコンセプトのみお知らせしておきます。どうぞお楽しみに!

また、上記ロストレガシー レジェンドを体験できる「ロストレガシー祭2014」がきたる10月11日に開催されます。様々な催し物がありますので、いち早く各セットを体験したい方、興味をお持ちの方は是非参加して下さいね。

http://twipla.jp/events/108663

以上です。

ツイートツイート